パターンを書く前に、編む。| 自由に編むこと、パターンを書くこと
まずは自由に編んでみる。
気になったところはほどいて、また編む。
その繰り返しの中で、「これはかわいい!」と思える形に出会えたとき、ようやくパターン作りが始まります。
だから私たちにとってパターンは、設計図というよりも、「編んできた道のりを振り返る記録」のような存在なのかもしれません。
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パターンなしで編むことから始まったものづくり

私たちがパターンを見ずに編み始めたのは、セーターを2着編み終えた頃でした。
デンマーク留学で出会った編み物は、とにかく自由。
現地の友人たちはパターンを見ずに思い思いのものを編み、その作品を当たり前のように楽しそうに身につけていました。
「編み物って、こんなに自由なんだ。」
その光景は、今でも忘れられません。

糸一本から好きな形を作っていく。
決まった答えがあるのではなく、手を動かしながら形を探していく。
そこには無限の可能性がありました。
帰国後、その自由な編み物をInstagramで発信するようになり、「もう一度自分でも編めるように」と書き残したメモが、今のパターン作りの始まりです。
もちろん、作り方なんて知りませんでした。
すべて独学の、見よう見まね。
だから今でも試行錯誤の連続。正解のない道をただひたすら歩いています。
私たちのパターン作り

ものづくりの流れは、とてもシンプルです。
① 好きなように試作品を編む(軽くメモを取りながら)
↓
② 「かわいい!」と思えたら修正点を考える
↓
③ 納得できるまで編み直す
↓
④ パターンを書く
↓
⑤ パターンを見ながらもう一度編んで確認
↓
⑥ テストニット
↓
完成
1行程づつ見ていきます。
① 好きなように試作品を編む(軽くメモを取りながら)
「こんなのがあったらいいな。」
全てはそんなぼんやりした気持ちから始まります。
いつか見た映画のワンシーン。
旅先で見た景色。
朝の空気。
夢の中で見た、誰かのシルエット。
言葉にはできない記憶のかけらを集めるように、糸を編み進めていきます。
気づけば、頭よりも先に手が動いていることもしばしば。
それを呼び起こすために、好きな糸をいろいろな太さの針で編んでみたり、とにかく手を動かして、きらりと光る瞬間を探しています。

写真はPecan Pie Sweaterの試作品。
これもかわいかったなあ。。笑
試作をする前に、ぼんやりしたイメージを描くこともあります。
便利な端末が色々あっても、やっぱり紙に描く時間は特別。
時間ができるとカフェへ行き、「次は何を編もうかな」と考えながらラフスケッチを描いたり、思いついたことを書き留めたり。

こちらは完成したデザインではなく、まだ形になっていないアイデアが詰まったノート。
iPadにも書けますが、不思議と新しいアイデアは紙に向かっているときのほうが浮かんできます。
ページをめくるたびに、「次は何を作ろう」と少しワクワクする。
そんな大切な一冊です。
そうしてイメージを膨らませながら試作品を編みます。
このとき一応メモも取っているのですが……
最初のメモが本当に怪しいんです(笑)。
「この段数で合ってたっけ?」
「ここで増やしたんだっけ?」
自由に編んでいるからこそ、自分のメモに振り回されることもしばしば。
完全に自業自得なのですが、それも含めてものづくりの面白さだと思っています。
② 「かわいい!」と思えたら修正点を考える
試作品でなんとなくのイメージが形になると、今度は「もっとこうしたい」がたくさん見えてきます。
もう少し丈を長くしたい。
模様のバランスを変えたい。
着たときにもっと心地よくなる方法はないかな。
そんなことを考えながら、修正のプランを立てていきます。

写真はCable Teeの遍歴。
緑→黄緑→ピンクの順に修正を重ねながら編んでいきました。
この段階で、軽くパターンの下書きも始めます。
最初は紙にラフなメモを書いていますが、この頃になるとiPadに打ち込むことが多くなります。
データにしておくと、この先パターンを起こすときに格段に楽になります。
iPadは、パターン作りを始めてからより活用するようになった道具のひとつです。
そして、この作業に欠かせないもう一人の相棒が電卓。
パターンを作っていると、サイズ展開や目数、段数など、ちょっとした計算をする場面が本当にたくさんあります。

私が使っているのは、BRAUNの電卓。
実は10年近く憧れていた道具でした。
以前は「素敵だけど、電卓を使う機会なんてないしな……」と思って諦めていたのですが、パターンを作るようになってからは毎日のように使う存在になりました。
憧れていたものを、ちゃんと使う理由ができたこと。
それだけで、机の上を見るたびに少し嬉しくなります。
③ 納得できるまで編み直す

ここからは、とにかく編み直しの時間です。
一か所直すと、今度は別のところが気になってくる。
少し丈を変えたら、模様の位置も変えたくなる。
そんなことを繰り返しながら、納得できる形を探していきます。
そして実は、編み上がって水通しをするまでは、本当にこれで良かったのか分かりません。
だからいつも、「これでどうだろう・・・」とそわそわしながら編み進めています。
この繰り返しをしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。
数を数えるのがあまり得意ではない私にとって(笑)、段数カウンターはなくてはならない相棒です。
「あれ、今何段目だったっけ?」
これはもう日常茶飯事。
パターンの下書きと、実際に編んでいる内容を一致させるためにも欠かせません。

私が使っているカウンターは、Cocoknits Row Counter。
裏がマグネットになっており、家では別売のリストバンド、Cocoknits Maker's Keepにつけて使っています。
外出するときはカウンターだけ外して持ち歩けるので、とても便利です。

リストバンドには、とじ針なども付けられるので、編み物中の小さなストレスを減らしてくれています。
そして、もうひとつ欠かせないのがメジャー。
寸法を測る場面は本当に多いので、気づけばいつもポケットの中に入っています。

使わないときはボタンで留めてコンパクトに収納できるテーラーメジャーは、持ち歩きにもぴったりです。
④ パターンを書く
何度も修正を重ね、「これなら大丈夫」と思えたら、いよいよパターンを書き起こします。
パターンはIllustratorを使って作っていますが、実はパソコンにはあまり詳しくありません(笑)。
「パターンを作るなら必要だ!」と思い、ようやく購入したタイプです。
よくわからない中、15インチ・メモリ16GBという条件で買える、一番手頃なモデルを探してたどり着いたのが、この DELL Inspiron 15 3000(3511)でした。

「慣れてきたらもっといいものを買おう!」
そう思っていたのですが、気づけばもう4年。
今ではパターン制作だけでなく、動画編集もこのパソコンと一緒に行っています。

家ではモニターにつないで作業することがほとんどですが、写真のようにたまちゃんが乱入してくることも。
15インチのノートPCなので、そんな時はリビングやカフェへ移動できるところも気に入っています。
マウスは、親指でボールを動かすトラックボールマウス。
最初は全然思うように動かせず苦戦しましたが、それも数日だけでした。
今では、これがないと困るくらい大切な相棒です。
細かく編み図やパーツを動かすことが多いので、私には一番しっくりきています。
⑤ パターンを見ながらもう一度編んで確認する
パターンが完成したら、それを見ながらもう一度編みます。

私が着る試作品は一番小さいサイズなので、このときは一番大きなサイズを編みながらパターンを確認することが多いです。
セーターは上半分が特に複雑なので、その部分までは一人で編み進めます。
ここまで問題なく編めたら、テストニッターさんを募集し、みんなで一緒に編み始めます。

このときのパターンはiPadにダウンロードし、GoodNotesに保存。
編みながら気づいたことをその場ですぐ書き込めるので、修正を重ねるパターン作りには欠かせない道具です。
⑥ テストニット

ここからは、テストニッターさんたちと一緒に作品を育てていく時間です。
一人で半分ほど編み進めてからテストニットをスタートしているのは、大きな間違いがあれば最初に気づけるようにするため。
……とはいえ、自分一人の感覚だけで書いてしまっている部分も多く、思い込みに気づかされることが本当にたくさんあります。
間違いだけでなく、書き方や技法、さまざまなアイディアを教えていただくたび、一人では気づけなかったことをたくさん学ばせてもらっています。
家で一人、黙々と編んでいる時間がほとんどだからこそ、遠く離れた場所で同じ作品を編んでくださる皆さんの存在はとても心強く、毎回たくさんの勇気をもらっています。
パターンを完成まで育ててくださっているのは、間違いなくテストニッターの皆さんです。
いつも本当にありがとうございます。
おわりに

今回は、自由に編んだセーターがパターンになるまでの流れを、
毎日のように使っている相棒たちとともにまとめてみました。
どれも特別な道具ではありません。
でも、「こんなものを編んでみたい」という気持ちを、毎日少しずつ形にしてくれる大切な存在です。
思い返してみると、私たちは最初から完璧な環境があったわけではありません。
独学で、思いつくままに編み始めて、失敗して、ほどいて、また編んで。
その繰り返しの中で、少しずつ今の形になってきました。
もちろん今でも落ち込むことはたくさんあります。
もっと上手になりたいと思う毎日です。
それでもここまで続けてこられたのは、一緒に作品を育ててくださるテストニッターさん、翻訳のご協力をしてくださる方、そして作品を編んでくださる世界中のニッターさんのおかげでした。
離れた場所にいても、年齢も言葉も違っていても、一つの作品を一緒に作り上げられる。
そんな時代に編み物ができることを、とても幸せに思っています。
私たちのパターンは、完璧な答えではありません。
試して、ほどいて、迷って、また編んで。
そんな時間を重ねた記録です。
だからこそ、「やってみたい。」
そんな小さな気持ちが生まれたなら、その気持ちを大切にしてほしいと思っています。
完璧じゃなくても大丈夫。
まずは一本の糸を手に取って、編み始めてみる。
そこから思いもよらない景色が広がっていくかもしれません。
この記事が、誰かの「やってみようかな。」につながればとても嬉しいです。