Barbroe Blouse|海外パターンの記録

Barbroe Blouse|海外パターンの記録

Knitting for Oliveの Barbroe Blouse

デンマークに留学していた頃、本屋さんで偶然手に取った一冊の編み物本。

ページをめくるたびに、素敵だなあと眺めていた中で、ひときわ心惹かれたのがこのブラウスでした。

繊細な模様と、すっと体に馴染むようなシルエット。

いつか編んでみたい。

そう思って、何度もページを眺めていました。


あれからずいぶん時間が経ちましたが、今見てもやっぱり好き。

今日は、そんなデンマークで恋に落ちたブラウスについて書いてみたいと思います。


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Knitting for Oliveは、デンマークの大好きな毛糸ブランドのひとつ。

デンマーク・コペンハーゲンを拠点とする、母娘から始まった家族経営のブランドで、編み物パターンだけでなく、メリノやモヘア、シルクなどのオリジナル毛糸もつくっています。

デザインはシンプルで繊細。そして何より、絶妙な色の美しさに惹かれます。

動物や環境に配慮した糸づくりにも取り組んでいて、ものだけではなく、その背景にある考え方まで美しいブランドです。


私がこのブランドに出会ったのは、デンマークに留学していた頃の本屋さんでした。

そこで見つけたのが、淡いピンク色をした、分厚くて大きな一冊。

ずっしりとしていて、私にはまるでお宝のように見えました。

ページをめくると、写真も、色も、ニットの佇まいも、どれも静かで美しい。

かわいい、というだけではなくて、その本の中に流れている空気そのものに惹かれたのを覚えています。

もちろんデンマーク語なので、私にはほとんど読むことができません。

それでも本屋さんへ行くたびに手に取って、何度も何度も眺め、「日本に帰る前に、絶対にお店へ行こう。」と心に決めていました。


それから少し経ち、留学も終わりに近づいた頃。

ついに、そのお店を訪れる日がやってきました。


コペンハーゲン中心部から、電車で数駅離れたところに、その素敵なお店はありました。

ずっと本の中で眺めていた世界。

ここにあるんだ、と思うと、お店に入る前からわくわくが止まりませんでした。

 

ドアを開けると、日の光がやわらかく差し込む、広々とした空間。

棚にはたくさんのセーター。

反対側の壁には浅い棚が並び、たくさんの糸が美しいグラデーションを描くように並んでいました。

その下には、本の中で見ていたセーターや、小さな子どものためのニットたち。

あっちを見ても、こっちを見ても、かわいい。

わたしにとって、天国のような場所でした。

 

糸やセーターだけではなく、そこにある家具や、差し込む光、ものの並び方まで。

どこを切り取っても、Knitting for Oliveの世界がありました。

この場所を訪れて、毛糸やニットだけではなく、その世界ごと大好きになりました。

サンプルの中には、子どものためのニットもたくさんありました。

ブランド名の「Knitting for」には、誰かのために編む、という意味が込められています。

そしてOliveは、創業者の家族が子どもにつけようと考えていたものの、実際にはつけられなかった名前なのだそう。

誰かを思いながら、手を動かして編む。

そんな編み物の原点のようなものが、ブランドの名前にも込められています。


素材の美しさももちろんですが、とにかく色が全部かわいい。

あの色も、この色も。

そして、これとこれを組み合わせたら……。

妄想がどんどん広がり、収拾がつかなくなります。


ずいぶん長いこと迷って、ブラウスとキャミソールを編むための糸を買いました。

これで、あの本の中で眺めていたものを自分の手で編める。

そう思うだけで、うれしくなりました。

しかし、ひとつ問題が。

実はその頃、まだ英語版のパターンが出ていなかったのです。

今のようにAIを使って気軽に翻訳する、という選択肢もなかった頃。

糸はあるのに、まだ編めない。

少しもどかしいけれど、それも含めて楽しみに待つことにしました。


英語版が出たら、絶対に編もう。

いつかこの糸が、あの美しいブラウスになる日を楽しみに。

大切に日本へ持ち帰りました。



旅に持っていく編み物

無事に英語版がリリースされ、Barbroe Blouseを編み始めたのは、その1年以上あと、フィンランドを旅したときです。

海外を旅していると、待つ時間がたくさんあります。

空港で飛行機を待ったり、電車に長く揺られたり。

電波が使えないこともありますし、スマートフォンの充電もなるべく残しておきたい。

そんなとき、編み物は読書と並んで、とても良い旅の友になります。

 

何もすることがなかった時間が、編む時間になる。

私は編み物をしているとき、半分は集中して、もう半分はぼうっとしているような気がします。

手元を見ているけれど、周りの音も聞こえている。

ときどき窓の外を見たり、知らない言葉の会話を聞いたり。

手を動かしているうちに、その場所の空気に少しずつ馴染んでいくような感覚があります。

旅先では、楽しいのと同じくらい、知らない場所にいる緊張もあります。

そんな緊張をほどいてくれるのも、私にとっては編み物です。

いつものように針を持って、いつものように一目ずつ編む。

それだけで、少し落ち着きます。


せっかくなら冬物も編みたいところですが、旅の荷物はなるべく軽くしたい。

その点、細い糸で編むブラウスは、コンパクトで軽く、バッグの片隅にすっと収まります。

旅先で少しずつ編み進めるのにも、ちょうどいい。

そうしてBarbroe Blouseは、フィンランドを一緒に旅する一着になりました。



難しそうで、難しくない

Barbroe Blouseで印象に残っているのは、その模様です。

一見、とても複雑に見えます。

ところが編んでみると、使われているのは比較的シンプルな増やし目と減らし目。

その組み合わせを繰り返していくことで、少しずつ模様が現れてきます。

難しいことをしているわけではないのに、美しい。

これには、とても驚きました。


編みやすさ。そして、この美しさ。

こんなパターンが書けるようになりたい、と強く思いました。


難しい技法を使うことが、必ずしも美しいニットにつながるわけではない。

知っている技法でも、組み合わせ方によって、見たことのないものになる。


今は自分でもパターンを書くようになり、このことを以前より強く感じます。

シンプルにすることは、案外難しい。

編む人にとって心地よく、それでいて完成したときにはっとするようなもの。

そんなものをつくれるようになりたいと思います。


袖を編む前に

身頃が完成し、袖を編む前に一度着てみました。

すると、この姿もとてもかわいい。

そのまましばらく、ノースリーブとして着ることにしました。

完成する前に着てしまうというのも、自分で編んでいるからできることです。


予定通りに進まなくても、途中で気が変わってもいい。

そんな小さな寄り道も、編み物の好きなところです。


季節が進み、少し肌寒くなった秋頃、今度は袖を編みました。

完成したBarbroe Blouseは、体に沿うシルエットがとてもきれいです。

繊細な模様と相まって、女性らしく、それでいて甘くなりすぎない。

これは、美しい。。

シンプルに白ボトムスと合わせるのもかわいいですが、黒のタイトスカートにインして、少しシックに着るのも好きです。



手の中から生まれるもの

海外のパターンを編んでいると、いつもたくさんの発見があります。

こんな編み方があるんだ。
こんなふうに組み合わせることができるんだ。

初めて出会う技法にわくわくすることもあれば、知っている技法の思いがけない使い方に驚くこともあります。

一着を編み終える頃には、ニットがひとつ増えるだけでなく、自分の中にも何か新しいものが残っている。

私にとって海外のパターンを編むことは、そんな楽しい学びの時間でもあります。

 

編み物には、まだまだ自分の知らないことがたくさんあります。

伸びしろがたくさん。

そう思うと、嬉しくなります。

 

一本の糸を、二本の針で編んでいく。

たったそれだけのことなのに、手の動かし方や目の組み合わせによって、いくらでも違うものが生まれてくる。

編み物には、無限の可能性があるように感じます。

 

もちろん、嬉しいことばかりではありません。

こんなにも可能性にあふれているのに、アイデアが浮かばない。

頭の中にはあるのに、何度編んでも思っていた形にならない。

素敵なパターンを編んで、その美しさに感動すればするほど、自分にはまだできないことがたくさんあることにも気づきます。

悔しい。もっとできるようになりたい。

考えて、編んで、ほどいて。

また考えて。

 

そんなことを繰り返していると、ときどき突然、頭の中で何かがつながる瞬間があります。

「あ、こうすればいいのか。」

そのひらめきが、実際に自分の手の中で形になったときは、本当に嬉しくて。

さっきまでただの糸だったものが、自分が思い描いていた形になっている、

この瞬間が、たまらなく好きです。

 

できない悔しさと、できたときの喜び。

その両方があるから、ずっと編み物を続けているのかもしれません。

美しいものを見ると、嬉しくなる。

そして、自分もつくりたくなる。

まだ知らないことがたくさんある。

まだつくれるものがたくさんある。

 

そう思えることが幸せで、編み物はやめられないのです。

そんな気持ちとともに、これからもずっと覚えていたい一着です。

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